私はディズニー版『スター・ウォーズ』について、個人的に思っていることを記事に書きました。
このディズニー製作の『スター・ウォーズ』の詳細な説明は、上に挙げた記事で既に行っているので割愛しますが、このシリーズはEpisode7の「フォースの覚醒」が公開された時点では、興行的に見た限り“失敗”ではありませんでした。
「フォースの覚醒」の興行収入は20億ドルを記録しており、同じくディズニー製作のスピンオフとしてEpisode3と4の間を描いた、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』も公開され、10億ドルを超える売上を出しました。
この『ローグ・ワン』の売上はスピンオフとしては、成功した部類だといえるのではないでしょうか。
各レビューサイトでは、ディズニー版『スター・ウォーズ』を好意的に迎える声も多く聞かれ、Episode7の続編であるEpisode8への期待の声もありました。
しかしEpisode8が公開されたあと、各レビューサイトは低評価の嵐となり、「スター・ウォーズは終わった」、「もう観ない」、「無理に続けなくて良い」といった声が聞かれることとなったのです。
リンク先を見ていただければわかりますが、「フォースの覚醒」だと星4から5の評価がある程度あるのに対し、「最後のジェダイ」では、星1から2のほうが高評価よりも多くついています。
そして「フォースの覚醒」のほうでも低評価は目立っており、両作に向けられた低評価の内容を見ると、おもに以下のようなことが言われているとわかります。
- 「ありきたり」
- 「作品内のルールを無視している」
- 「ただの過去作のパクリ」
- 「終わった」
- 「旧作ファンとしては納得できない」
- 「完結したものを無理やり続けただけ」
- 「ご都合主義的で商業主義丸出し」
そして最終的に「最後のジェダイ」は、13億ドルほどの売上となりました。
今回問題とするのは、ディズニー版『スター・ウォーズ』が、なぜマーケティング的にも失敗したのかということです。
先に挙げたファンによる低評価の内容を見ていると、ディズニー版『スター・ウォーズ』が、なぜ失敗したのかという根本的な部分が見えてきます。
それは“商業主義に囚われて無理に続編をつくり、過去作を焼き直しして薄っぺらい作品を出した結果、旧作および新規ファンを蔑ろにしてしまった”ということです。
今回はディズニー版『スター・ウォーズ』がなぜ失敗したのか、マーケティングの観点から分析していきます。
◆この記事の目次
ディズニー版『スター・ウォーズ』の問題点
先に挙げた低評価と本編の内容を総合して判断すると、ディズニー版『スター・ウォーズ』には、以下の問題点があるとわかります。
- 世界観と設定の改悪・破壊
- 世界観に厚みがなくなった
- 旧作登場人物へのぞんざいな扱い
- 新キャラクターを露骨に推し出している
- 新キャラクターに魅力がない
- 過去作の焼き直しをしているだけ
- ご都合主義のオンパレード
- 旧作ファンに向けた露骨なアピール
このうち「世界観と設定の改悪・破壊」から「新キャラクターに魅力がない」までは、その理由について前回の記事で具体的に書きました。
この「世界観と設定の改悪」から「新キャラクターに魅力がない」ことの根本には、“制作側の都合によって旧作ファンを軽んじ、ファンが求めていることを無視してしまった”、という問題があります。
そして「過去作の焼き直しをしているだけ」から「旧作ファンに向けた露骨なアピール」は、“旧作ファンを狙いすぎてもっとも安易な方法に頼ってしまった”という問題をはらんでいます。
この「単なる焼き直し」や「ご都合主義のオンパレード」、「露骨なアピール」なども、「こうやっておけば、旧作ファン、特に旧3部作好きは食いつくだろう」という安易な考えが透けて見え、むしろ旧作ファンを侮っているようにしか見えません。
つまりこの2つの問題に共通することは、“シリーズを愛してくれているファンを侮っている”ということであり、ディズニーは『スター・ウォーズ』を観てお金を出してくれる“大切な顧客”を、“カモ”としか考えていなかったといえるのではないでしょうか。
また、Episode7から始まる続3部作を展開したということは、ディズニーは『スター・ウォーズ』の新規ファン獲得も考えているはずです。
しかしその新規ファンになってくれるかも知れない人々に、「ご都合主義のオンパレード」を導入した、「単なる焼き直し」作品を見せるというのは、作り手(商品の提供元)としてどうなのでしょうか。
こんなことをやっていては、今回のディズニー版『スター・ウォーズ』が失敗してしまっても、仕方ないことでしょう。
ディズニーは顧客のことを考えて『スター・ウォーズ』をつくるべきだった
Episode8の「最後のジェダイ」については、役者陣からも非難の声が上がりました。
旧3部作の主人公、ルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミル氏は、監督のライアン・ジョンソンが書いた脚本に対し、「侮辱されていると思った」、「こんなのはルーク・スカイウォーカーじゃない!」などと批判しました。
マーク・ハミル氏は今もまだ納得していないと推測できる、意味深なコメントを残しています。
【イタすぎるセレブ達】『スター・ウォーズ』マーク・ハミル、最新作は「僕のルーク像とは違った」
キャスト陣の、しかも旧3部作の主演まで不快にさせる「最後のジェダイ」の内容は、多くのファンの心に届くことはありませんでした。
もしディズニーが既存ファンに媚びるのでもなければ、蔑ろにするわけでもなく、ルーカス氏の志を真に受け継ごうとする思いで『スター・ウォーズ』をつくっていたら、どうなっていたでしょうか?
どんな商品や作品を用意していたとしても、それがお金を出して買ってくれる、観てくれる顧客のことを考えていなければ話になりません。
顧客とのつながりを大切にし、そのうえで自分達が本当につくりたい、“質の良いもの”を生み出せば、今回のディズニー版『スター・ウォーズ』のような失敗は、おそらく回避できるはずです。
まとめ
今回はディズニー版『スター・ウォーズ』が失敗した原因について、マーケティングの観点から分析しました。
2019年の12月20日に公開されたEpisode9、「スカイウォーカーの夜明け」も、この記事で指摘したような「過去作の焼き直し映画」だと思います。
個人的に『スター・ウォーズ』の明るい未来が見えません。