徳本です。
地方過疎化が問題になっている現代日本では、“地方創生”がうたわれていました。
しかしこの“地方創生”、結論からいうと上手くいっていません。
日本財団の18歳意識調査によると、「“地方創生”が上手くいっている」と答えた人の割合は、4.8%という状態です。
日本財団「18歳意識調査」第10回 テーマ:地方創生について
しかしそもそもこの地方創生、どうして上手くいってないのでしょうか。
そこには政府の政策に大きな原因があったのです。
今回は地方創生の現状とその失敗原因について、書いていきます。
◆この記事の目次
地方創生とはなにか
“地方創生”とは、第二次安倍改造内閣が発足した、2014年9月に打ち出された政策のことをいいます。
この“地方創生”政策の本旨は、“地方の人口減少を抑制するため、東京への官公庁の一極集中を是正する”というものでした。
しかしこの“地方創生”という言葉、2019年11月現在では、メディアでほとんど見かけることはありません。
“地方創生”はいつの間にか“一億総活躍社会”というスローガンへと変化し、“働き方改革”や“人づくり革命”など、何度も“革命”を連呼する政策が次々と打ち出されてています。
第二次改造内閣発足当初、あれほど騒いでいた“地方創生”はどうしたのでしょうか。
結論からいうと、この“地方創生”政策は完全な失敗に終わりました。
なぜ“地方創生”は失敗したのでしょうか。
そこには政府の認識の甘さと責任感のなさがあったのです。
地方創生は意味のない“ばら撒き政策”
地方創生が上手く行かなかった理由は、そもそも政策が始まった2014年9月の時点で、問題の根本原因を政府側がきちんと認識できず、“ばら撒き政策”を実行したからです。
たとえば政策開始後、地方創生を推進する「地方創生本部」は、“地域消費喚起・生活支援型”の交付金2500億円を各地方自治体へ交付しましたが、その用途は限定されており、「プレミア商品券」や「半額旅行券」が大量に発行されることに使われました。
この“ばら撒き”によって新規消費の喚起額は、3391億円に達しましたが、その内実は大半が政府の交付金によって占められており、実際の消費喚起額は1019億円にとどまりました。
この1019億円という金額のなかには、将来的な消費が先食いされた額も含まれているので、実質的な消費喚起額はもっと少ないといえるでしょう。
そもそも「プレミア商品券」や「半額旅行券」などがばら撒かれたからといって、それだけで人々の消費を促せるという考え自体が甘いものです。
なぜなら消費者のなかには、“手に入った特別な券をあとにとっておこう”と考える人もおり、仮に購買意欲が掻き立てられたとしても、その商品券や旅行券を使い切ったあとは再びもとの消費スタイルに戻るので、一時的な効果を生むだけだからです。
つまりこの“ばら撒き政策”では、継続的な消費には結びつかないんですね。
また、この“ばら撒き政策”によって出た成果は東京の大手商業資本や旅行会社に還元され、政策実行のために拠出された交付金は、最終的に公債になるので国民の負担としてのしかかってくることになります。
つまりこの“地方創生”政策は、“地方にはなにひとつプラスになることがない政策”だといえるのです。
自治体が「地方創生」をガンバると、「人口減少」が加速する(今井 照) | 現代ビジネス | 講談社
地方創生の交付金はなぜ用途が限定されるのか
地方創生のために政府が拠出した交付金は、用途が限定されており、地域を活性化させる事業のために使うことができないものとなっていました。
しかしなぜ“地方創生”のために交付されたはずのお金が、自治体の思うように“地方創生”のために使えないのでしょうか。
その理由は、“地方の衰退は地方自治体の自己責任”という論理が政策の背景にあるからです。
少し話が変わりますが、今の政府が行っている経済政策は、“新自由主義”と呼ばれる経済イデオロギーが背景にあります。
この新自由主義は“政府が介入しない市場の自由な競争”を掲げています。
その実態は、資本力のある大企業と資本力に乏しい中小企業が同じ環境下で競争にさらされ、それによって中小企業が倒産したとしても、それは“資本力のなかった中小企業の責任”とするような、非常に残酷で苛烈なものです。
新自由主義は“市場原理主義”とも呼ばれますが、それは“すべてを市場の枠組みで捉えて構築しよう”とする考え方であることを表すものです。
“市場の自由な競争”を促すために法人税を削減して代わりに消費税を上げ、お金の掛かる社会保障・福祉政策を切り捨て、“小さな政府”を志向します。
しかし“小さな政府”を志向して社会保障・福祉政策を切り捨ててしまえば、社会的に弱い立場の人たちが苦しむことになります。
その“社会的に弱い立場の人たち”の貧困を正当化させるために出てきた理屈が、“自己責任論”です。
つまり、この“地方創生”政策にも新自由主義に基づいた“自己責任論”が反映されているので、自治体に地方衰退の責任が押し付けられているのです。
しかし、政府によって一方的に地方衰退の責任を押し付けられた自治体は、堪ったものではありません。
自治体は政府の予算をつけるために、“産業誘致”政策を行うわけですが、製造業がオートメーション化された現代では雇用創出にはつながりにくく、たとえ“地域おこし”のような観光産業を行ったとしても、交流人口が増えるとは限らず、雇用を生みにくい一時的なものでしかありません。
つまり政府が本当に“地方創生”を行いたいのであれば、“自己責任論”という虚妄を反省して予算を注ぎ込み、地方活性化に向けて現状を把握し、自治体と協力して対応するしかないのです。
まとめ
今回は“地方創生”の問題について解説しました。
このように見ていくと“地方創生”の失敗は、政府の認識と政策の過ちに原因があるということができ、この問題を解決するためには政府側の認識を正す必要があるように思えます。