政治

中東地域への自衛隊派遣を撤回すべき理由

投稿日:2020年1月10日 更新日:

徳本です。

現在、アメリカとイランの関係が悪化していることは以前の記事で解説したとおりです。

アメリカとイランの戦争が起きる可能性は?

問題は、日本の安倍政権がこの状況で自衛隊を中東地域に派遣するとしていることです。

この「中東への自衛隊派遣」についての閣議決定は、2019年の12月27日に閣議決定しました。

アメリカとイランの対立が激化している以上、この「自衛隊派遣の閣議決定」は撤回すべきことのはずです。

しかし日本政府はこの「中東へ自衛隊を派遣する閣議決定」を撤回せず、10日に護衛艦1隻と哨戒機2機の派遣を命令しました。

中東への自衛隊派遣 きょう命令 河野防衛相

この自衛隊派遣の決定は、絶対に撤回すべきことです。

その理由は前回の記事で解説した通り、アメリカに日本の自衛隊が利用される可能性が高いからです。

もちろんそれだけではなく、「イランは日本がアメリカと関係が深いと知っているので、自衛隊を危険視するから」という理由もあります。

今回は自衛隊の中東派遣を撤回すべき理由について、簡単に説明します。


イランの復讐が海に向かう可能性は低い

まず、自衛隊を中東派遣する理由について、日本政府は「調査・研究のため」だとしています。

しかしイランとアメリカとの関係が悪化したこの段階で、なにを「調査・研究する」のか甚だ疑問です

また、「ホルムズ海峡を航行する日本船舶を護衛するため」と考えたとしても、不思議な話です。

なぜなら、イランはアメリカの基地や大使館などの地上にある施設を狙っているのであり、海上を航行する船舶(アメリカの船を除く)を狙うとは考えにくいからです。

ソレイマニ司令官殺害と米イラン関係の行方

たしかに船舶のようなソフトターゲットを狙う可能性はゼロではありませんが、今までのイランの行動パターンから考えると、海を行く船舶を狙うとは考えにくいといえます。

ましてや、今のイランの目的はソレイマニを殺されたことによる、アメリカへの復讐です。

アメリカ以外の国家に属する船舶をイランが標的にした場合、イランの行動をイラン自身が正当化することはできません

そもそも護衛艦数隻と哨戒機数機を派遣した程度で、広大なホルムズ海峡を航行する日本船舶を守り切ることは、不可能に近いです。

よって、「中東に自衛隊を派遣する」理由が、「ホルムズ海峡を航行する日本船舶を守るため」とは考えにくいのです。

自衛隊派遣がイランを刺激し、日本が攻撃される可能性

もうひとつは、自衛隊派遣がイランを刺激し、イランが日本も標的にする可能性があることです。

イランの復讐の対象はもちろんアメリカですが、イランの革命防衛隊は声明で、米国の同盟国の領土がアメリカによる攻撃に使用された場合、その国を反撃の対象とすると警告しました。

このイラン側による警告が発せられたあとも、日本政府は自衛隊を中東へ派遣する閣議決定を撤回していません。

アメリカが主導する「有志連合」に参加しないとはいえ、今の状況下で自衛隊を中東に派遣することは、「アメリカと日本は一体だ」とアピールしているようなものです。

2015年に成立した安保法制では、国際社会の平和と安全に関わる場合は米軍の後方支援が可能です。

そしてアメリカや日本政府は、今回の対立を国際社会の平和と安全に関わる場合だとみなすこともできます。

また、イラク戦争時に日本政府は「アメリカ軍の後方支援」を拡大解釈し、2万4000人の米軍輸送も行いました

この状況下で中東へ自衛隊を派遣した場合、イランが明確に日本の船舶や施設を狙う可能性もないとは言い切れないのです。

そもそもアメリカとイランの対立が激化したのであれば、イランへ要らぬ刺激を与えないよう、自衛隊の中東派遣を見合わせるのが筋だといえます。

再び日本がアメリカの国際法違反の戦争に協力することになる

日本政府がこのまま中東へ自衛隊を派遣した場合、日本は再びアメリカの起こした「国際法違反の戦争」に協力することになります。

前回の記事では、イラク戦争の概要とあの戦争が国際法違反の侵略戦争だったと解説しました。

アメリカとイランの戦争が起きる可能性は?

今回、アメリカがイランのソレイマニを、米軍の駐留先であるイラクの合意を得ずに空爆で殺害したこと国際法(国連憲章)違反として非難されています

焦点:イラン司令官殺害、米政府の法的根拠に疑問の声

国際法というのは、特定の国々にとって都合よくつくられている面もありますが、今回問題となっている国連憲章の規定は、国際紛争を回避するために設けられたものです。

また今回、アメリカ軍が行った攻撃は、米軍のイラク駐留に関する合意にも違反しており、イラク議会が米軍駐留を終わらせるよう政府に求めています。

イラク議会、米軍の駐留終了を政府に要請-イラン司令官殺害受け

国際的な取り決めを無視してしまい、それを正当化させてしまっては、各国が自国の利益のために侵略戦争をしてもよいといっているようなものです。

そんなことはもちろん論外ですが、国際法違反を正当化させることは、そんな論外な文脈を正当化させることにもつながります

そして、日本はわざわざ特別措置法をつくってイラク戦争へ実質的に参戦し、今もそれをきちんと検証していないどころか、正当化させています

先に述べたこととあわせると、今回、日本が自衛隊を中東へ派遣した場合、国際法違反の戦争に協力させられる可能性が高いといえるのです。


日本の自衛隊がアメリカの軍隊として戦わされる可能性がある

そして最大の問題は、戦争の危機があるとアメリカ軍司令部が判断したとき、米軍が日本の自衛隊をコントロールできることです。

このアメリカ軍が持つ自衛隊の指揮権は、「統一指揮権」と呼ばれ、1950年の朝鮮戦争時に当時の内閣総理大臣、吉田茂とアメリカとの間で交わされた密約です。

詳細は長くなるので割愛しますが、この統一指揮権は朝鮮戦争時だけではなく、今も生きています

さらにこの統一指揮権が使用できる範囲は朝鮮半島を含む、日本の周辺だけだったのですが、2015年の安保法制成立によって範囲が拡大し、どの地域にいても米軍が自衛隊をコントロールできるようになっています

この指揮権密約の詳細は、長くなるのでここでは解説しません。

とにかくいえることは、この状況下で日本が自衛隊を派遣した場合、アメリカの軍隊として利用される可能性が高いということです。

まとめ

中東への自衛隊派遣を撤回しない場合、日本が国際法違反のくだらない戦争の片棒を担ぐ可能性は高いといえます。

再び日本はアメリカのくだらない戦争に自ら参加し、国恥を世界に晒してしまうのでしょうか。

そんな論外なことは断じてあってはいけないと、私は強く思っています。




-政治
-, , , , , , , , , ,

Copyright© Tokumoto blog-言葉の力、お借りします! , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.