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アンパンチ論争とヒーローもの

投稿日:2019年8月19日 更新日:

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徳本です。

ツイッターで話題の「アンパンチ論争」。

アニメ『それいけ! アンパンマン』の主人公・アンパンマンが、敵のバイキンマンと戦うときに繰り出す、アンパンチを見た子どもが暴力的になるのではないかという親の声が、ネット上で論争の的になっているこの件。

アンパンマンがアンパンチを繰り出す場面は暴力的ではないという声が多数である一方、子どもが真似をしていたという報告もあることも確かです。

この件について私は、「親がきちんと子どもと向き合っていれば、全く問題ないこと」だと思っています。

そもそもアンパンチの場面が「暴力的」という概念に当てはまるのかという問題もありますが、まずは事の経緯を述べた後、私の見解を述べてみたいと思います。

何が問題視されたのか

ことの発端は8月11日、ネットに上がったこの記事でした。

この記事内ではアンパンチを見た乳幼児が暴力的になるのではないか、と心配する親の声がネット上で見受けられることについて触れ、創価大学文学部・渋谷明子教授へこの問題に関する見解を聞いています。

上記のニュース記事を受け、ツイッターでは「#アンパンチに替わる非暴力的な解決策」というハッシュタグがトレンド入りし、さまざまな意見が飛び交っているのです。

アンパンチ=暴力的という論理は短絡的

私としては、この「アンパンチ=暴力的だから子どもに悪影響が」という考えは、あまりにも短絡的かつ視野狭窄な意見でしかないと思っています。

アンパンマン」原作者のやなせたかし氏は「アンパンマンバイキンマンを殴りたくて殴っているのではなく、本当は和解したいが、相手を止めるために仕方なくアンパンチをしている」という考えで作品を描いていたと述べています。

当たり前ですが暴力礼賛のような意図で描いていたわけではありません。

だいたいやなせ氏は戦争を経験しており、そこで彼は「大国同士がイデオロギーを振りかざし、自分達の立場を肯定しようとする状況」に辟易したんですね。

だからやなせ氏は「大義名分を掲げず、常に他者のことを思い遣る究極のヒーロー」として、アンパンマンを創造したのです。


「アンパンチが暴力的だからやめろ」という意見は、そういったやなせ氏の思いを無視した、暴論でしかないといえるでしょう。

ほかのヒーローものでもそういうテーマを掲げた作品はありますし、中には「ヒーローが皆の笑顔を守るためとはいえ、暴力を振るうことが許されるのか」という究極のテーマに挑んだ作品もあります。

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そのヒーロー作品内でも主人公は戦うことに苦しみ、「みんなを守るために相手を殺さなくてはいけない」ということに葛藤しながらも、「自分自身にできること」として敵と戦い抜く姿が描かれています。

彼は決して自分の振るう「暴力」を正当化しませんでした。むしろそれでしか解決できないことは悲しすぎるといい、理想としては暴力以外の手段で解決できたらよいと述べているんですね。

そのヒーロー作品は今回「アンパンチ=暴力的」と言った人達にとっては、目を背けたくなるような「暴力描写」であふれています。でもそれは「暴力の虚しさ」を訴えたいがために、スタッフがあえてそうしたんですね。

暴力描写があるからと言って、その上辺だけで作品を判断して「暴力礼賛だ!」、「子どもが暴力的になる!」と決めつけてしまうのは、あまりにも短絡的ではないでしょうか

ヒーローものから子どもが受ける影響は?

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今回問題となった記事では大学教授の方が、「子どもがアンパンチの真似をしたら、相手も叩かれたら痛いんだからやめようね、とよく話すことが大切」だとおっしゃっています。

そうなんですね。親がきちんと子どもを見ていれば、「アンパンチを見て暴力的になる」なんてことはないんです。

むしろ「相手も痛いんだからやめようね」という言い方をすれば、人の痛みを分かる子どもになる可能性もあるのではないでしょうか?

確かに幼い頃はテレビから影響を受けることもあるかも知れません。しかしそんなときは、親がしっかりと子どもと向き合って話せば良いことのはずです。

ヒーローものの中には、「力を持ったとしてそれをどの方向に使うかが大切」だと説いている作品もあります。

もし子どもがそれを見ていたとして、そのことがいまいちよく分からないといった場合は、親がそのことを噛み砕いて解説してやれば良いと思います。

たとえ解説のために使える時間が足りないように思えたとしても、やはり親子で会話を持つ時間はなるべく作るようにしたほうが良いのではないでしょうか。


まとめ

私はこの問題を、親が子どもとしっかり向き合っていれば全く問題のないことだと思っています。

しかしアンパンチが問題となった背景には、貧富の格差で必死に働かねばならず、子どもと向き合える時間の余裕のない親が増えている、ということがあるのかも知れません。

とはいえ、先に述べたように親が子どもと話し合う時間はなるべく持つことが大切だと思います。

子どもとの時間を持てないからと言って作品自体を否定しようとするのは、それ自体が「視聴者という立場」を使った「言論の暴力」ではないでしょうか。




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