政治

「大阪都構想」の危険性と反対する理由

投稿日:2020年10月15日 更新日:

徳本です。

2020年11月1日、「大阪市を消滅させ、特別区に分散させる」構想の住民投票が行われます。

この構想は、日本維新の会によって「大阪都構想」と呼称されていますが、実際は住民投票で賛成票が反対票を上回ったとしても「大阪都」にはなりません


住民投票で賛成票が反対票を上回った場合は、大阪市が「自治権も存在しない村以下の特別区」に解体され金は外に流出し、住民サービスも著しく低下します。

今回は「大阪都構想」と言われているものの実態と、なぜ「大阪都構想」が危険だと言えるのか、なぜ私が「大阪都構想」に反対かについて詳しく解説します。

「大阪都構想」が危険な3つの理由

「大阪都構想」と言われているものが危険な理由は、以下の3つです。

大阪市が解体され、その権限と財源が大阪府に吸い上げられる

「大阪都構想」というものについて、「維新の会」は“大阪都にすることで二重行政を解消し、無駄をなくして住民サービスの向上に繋げる”としています。

しかし実際には、住民投票の結果で賛成が反対を上回っても「大阪都」になることはなく大阪市が「4つの特別区」に解体されることになります。

そうなった場合、政令指定都市としての大阪市は消滅し、自治権や行政サービスの提供権都市計画や区画整理事業に関する権限もなくなります

指定都市とは|指定都市市長会

平成30年時点での政令指定都市の数は、日本全国で20あり、そのうちのひとつが大阪市です。

何故政令指定都市が20もあるのかというと、道府県にわざわざお伺いを立てなくても施策決定ができるからです。

つまりは施策決定までのプロセスが早くなり、感染症の蔓延時や災害時などにも迅速に対応できるのです

他にも政令指定都市であれば、福祉事業や保健などの市民の健康に関する権限や、道路や港湾河川などの整備と管理運営権都市計画権も有しています。

ところが、政令指定都市としての大阪市が消滅して「特別区」になった場合はそれらの権限を手放すことになるのです。

つまりは「特別区」になると、以下のようになるのです。

  • 感染症の蔓延時や災害時に迅速な対応ができない
  • 市民の健康に関する施策も決定できず、その他の住民サービスの質も低下する
  • 自分達で都市計画もできず、道路や港湾、河川などの整備・管理もできない
  • 消防の事務や上下水道、電気やガスの供給施設の設置権限もなくなる

そして大阪市が消滅して「特別区」となった場合は、市の財源の所有権が府に移行することになるので財源も府に吸い上げられてしまいます

政令市である現在の大阪市には8600億円の自主財源があるが、特別区の自主財源は約2500億円に激減する。6000億円は大阪府に入り、そこから4000億円が特別区に振り分けられるが、残りの2000億円は大阪府の一般財源に入り、より広域な事業に使われる。特別区のために国が配分する地方交付税交付金も大阪府を迂回することになり、その一部(約24%)を府が召し上げる。

大阪市の自主財源の大半を占める市税収入(6600億円)には、個人市民税、市タバコ税、軽自動車税、固定資産税、法人市民税、都市計画税、事務所税の7項目があるが、このうち特別区の自主財源になるのは個人市民税、区タバコ税、軽自動車税の3つだけで合計1782億円。現行の市税収入の4分の1に減り、残りの4分の3は府税に組み込まれる。

引用元:市民の自治権奪う「大阪都構想」 大阪市の廃止狙う維新 背後で蠢く外資や財界|長周新聞

政令指定都市は都道府県から財源の一部を渡されており、それによって様々な施策を実行できています。

つまり財源がなくなれば市民に寄り添った住民サービスや都市計画ができなくなるというわけです

そうなると住民サービスの質を向上させたりより地域の実情に合ったまちづくりをすることもできなくなってしまうのです。

 4つの特別区役所にそれぞれ公選制の区長、区議会を置くことで「より身近な仕事について民意を届けやすくなる」としているが、特別区は地方自治法で普通地方公共団体である市町村に準ずる団体と位置づけられており、市町村にある都市計画の決定権すらない。住民の民意が届いたところで、その財源や権限は極めて小さい。1889(明治22)年の市制施行から130年かけて培ってきた大阪市としての権限を返上し、一般市以下のいわば「個人商店」から出直すことを意味している。

引用元:市民の自治権奪う「大阪都構想」 大阪市の廃止狙う維新 背後で蠢く外資や財界|長周新聞

また、「維新の会」は「特別区の設置後も区役所は維持する」と言っていますが、その区役所は将来的には廃止せざるを得なくなるのです


維新の会による巧妙な詐欺喧伝

今回(2020年)の「特別区設置協定書」には、現在の大阪市にある24の行政区内の区役所を存続させると明記されています。

大阪市が「特別区」になった場合は24の行政区は消滅するので、区役所もなくなるのですが、今回「維新の会」は「区役所はなくならない」と言っています。

「維新の会」は大阪市解体後、24の行政区を「地域自治区」と呼び、今の区役所を「地域自治区事務所」として位置づけ、それを「区役所」と呼ぶとしています。

「区役所」と呼ぶ「地域自治区事務所」の業務は、「区役所と変わらない」と維新の会は言っていますが、特別区協定書にはその職員配置数までは載っていません

「維新の会」の出した「特別区制度案」では、特別区本庁の職員数の31%から40%ほどが地域自治区事務所(区役所と呼称)に置かれています

つまりは、特別区本庁内の人員の大多数が出先機関に送られるというわけであり、そうなれば特別区本庁の業務は成り立ちません

特別区本庁は地域自治区事務所(区役所と呼称)の上にある機関ですから、その仕事が成り立たないのであれば、下にある地域自治区事務所(区役所と呼称)が縮小化されていきます

最終的に地域自治区事務所(区役所と呼称)がなくなるということも十分にあり得るのです。

そもそも無理な人員配置をしている時点で「住民サービスの向上」など望むべくもありません

大阪都構想の「バージョンアップ」とは市民をだます詐欺度アップ!|Yahooニュース

つまりは、「維新の会」の“「大阪都構想」によって「区役所はなくならない」、「住民サービスが向上する」”という話はデマというわけです

他にも、「維新の会」は数多くのデマを撒き散らしており、「財政効果があり、費用削減になる」という類のことを言っています。

しかしそもそも「住民サービスが向上」し、経済活動を支えるためのインフラである道路などへの投資をする以上、費用削減効果があるとは言えません。

政令指定都市において1 人あたり行政経費が大きくなる背景には、行政上の権限が一般の市に比べて幅広く都道府県業務の一部を担っていること、動物園や美術館をはじめとする中小都市にはない行政サービスを提供していること、活発な経済活動を支えるため道路や鉄道などインフラへの大きな投資が必要となること、地価や物価の高さにあわせて公務員給与が割増されること、といった事情がある。

つまり「大都会ならではの出費」が必要であり、市民はそれに見合った「大都会ならではのサービス」を受けているのだ。

大阪市を分割しても、現在の大阪市域が「都会でなくなる」わけではないのだから、必要な出費が減るとは考えにくい。仮に削減できるとすればそれは、大阪府への単なる業務移管の結果であるか、もしくはサービスを縮小した場合であろう。

引用元:〈第1回〉「大阪都構想の経済効果」への重大な疑問|大阪府保険医協会

そしてその「住民サービス向上」も先に述べたようにデマであり、「大都会ならではの出費」があるので経費削減も見込めません。

それどころか、大企業が集中する中央区や北区といった特別区と他の区では財政面で格差が生じます

また、かつて橋下徹のもとで行われた住民投票では「二重行政解消による財政効果」を喧伝していましたが、それもデマだと判明しています

前回の住民投票は否決されたが、当時も維新の会はありとあらゆるデマ、嘘、プロパガンダを垂れ流していた。

当初、維新の会は二重行政の解消により「最低でも年間4000億円」の財源を生み出すとしていたが、粉飾が発覚。そのうち、「財政効果はあまり意味がない」と言い出し、最後には「財政効果は無限」と言い出した。支離滅裂である。

引用元:大阪都構想 事実を確認しなければ維新のペテンに騙される|日刊ゲンダイ

また、現在の東京都はかつて東京府と東京市でしたが、1943年に軍部統制派が支配していた政府によって自治権と財政を奪われて行政区に格下げされました

その後、1947年に23の特別区になりましたが、長年地方公共団体として扱われずに自治権が乏しく、2000年代になってようやく地方公共団体と規定されました。

しかし都市計画の決定権がなく、各特別区の税収は全て都に吸い上げられ特別区の財政は少ないのが現状です。

しかし公選制の区長、区議会があるにもかかわらず、まちづくり(都市計画)の決定権はなく、固定資産税や法人住民税、都市計画税など特別区の税収は、すべて東京都が徴税する。そのうち各区の状況に応じて分配されるのは約半分で、その他の1兆円をこえる税収が都の事業に流用されている。しかも、国が地方公共団体に配分する地方交付税交付金は、特別区の場合は「23区全体で黒字」であれば、単一の区が赤字であっても交付されない建て付けになっている。つまり、都区制度の下では、区の黒字分は他の区の赤字補てんに使われることになり、特別区の財政はますます目減りする。

引用元:市民の自治権奪う「大阪都構想」 大阪市の廃止狙う維新 背後で蠢く外資や財界|長周新聞

つまりは都が豊富な財源によって積極的に道路や港湾部の開発などを推し進める一方で、特別区は待機児童問題などに使う財源がないのです。

「大阪都構想」が実現した場合、徴収分の金をどう使うか、どう配分するかは全て府知事と府議会が決定します

また、東京都と異なり特別区の人口は大阪府の3割程度しかないので、今の市の財政が吸い上げられて府のために利用されることは明白です

これのどこに「財政効果がある」というのでしょうか

「都構想」が通った場合、カジノに代表される外資の誘致場となる

大阪市営地下鉄が廃止され、「大阪メトロ」という企業へと民営化されたのは、2018年のこと。

民営化を推し進めるのは「小さな政府」を志向しようというものであり、その根底には市場原理主義に基づき苛烈な競争を煽る新自由主義政策があります。


この新自由主義文脈の中では「市場の自由な競争」が奨励されるので、企業の負担となる法人税が削減され、代わりに消費税から税の徴収がされます

また、「小さな政府」を志向することから、新自由主義政策では行政サービスや福祉政策への費用が削減されるので、行政サービスの質・範囲は低下します。

市民に対しては「大阪の成長を止めるな!」「大企業が潤えば、住民も潤う」というトリクルダウン論を振りまきながら、次々と公共施設や住民サービスが縮小し、ついには大阪市自体がなくなるという事態に直面している。大阪府戦略本部会議の中間報告を見ても、「ポストコロナ」の経済戦略は、インバウンドの再生と促進、外国人材の活用による人手不足の解消と多様性の向上という、コロナ禍で完全に破たんした政策を思考停止状態で推進している。そして唯一といえる地域経済政策は、2025年の万博の開催、カジノ(IR)の誘致であり、市民をカヤの外に置いて外資や中央資本をもうけさせるためのプロジェクトでしかない。それも、日本国内のみならず各国ですでに破綻が証明された時代遅れの政策であり、「公共」を徹底的に破壊して外資の草刈り場にしてしまう新自由主義政策といえる。

引用元:市民の自治権奪う「大阪都構想」 大阪市の廃止狙う維新 背後で蠢く外資や財界|長周新聞

「大阪都構想」でもバス事業や水道大学などの教育機関文化機関などは全て民営化することが謳われ、その先例としての「大阪メトロ」があります。

そして「維新の会」は、2025年の大阪万博以降にカジノの誘致を考えており、それも新自由主義グローバリズムに基づく外資・中央資本お誂え向きの計画です。

つまりは、「大阪市を破壊して住民サービスを低下させて市民を踏み台にし外資を誘致して外資・大企業を儲けさせよう」という計画が、「大阪都構想」なのです。

まとめ

「大阪都構想」の住民投票は、2020年11月1日で2回目です。

今回の住民投票については、前回反対の立場を示していた公明党が賛成に回り、18歳選挙権が存在しているなかでの投票となります。

「維新の会」が大阪市を廃止した後には外資が誘致され市民が外資や中央資本を儲けさせるための踏み台になります

それだけではなく、仮に「維新の会」の手法が全国に拡大した場合は同じように、今の自民党など国民を騙す政治勢力が力をつけていくことになると考えられます

今回の記事をきっかけに、「大阪都構想」と呼ばれているものの本質を見極めていただければ幸いです。


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